一時期、「生食パン」が大ブームになった。
パン屋をやっている身としては、ずっと気になっていた。
生クリームが入っているから生食パン?
生地がしっとりしているから生食パン?
いや、そもそも焼いてあるのに、何が「生」なんだ?
考え始めると、誰も明確に説明できない気がする。
そんなある日、「生食パンのおいしい食べ方」という記事を見かけた。
『厚めにスライスして、バターをたっぷり塗り、こんがりトーストしてください』
……焼くんかい。
せっかく「生」を売りにしてるんじゃないんかい。
結局ただの食パンやんけ。
もちろん、トーストしたらおいしい。
食パンなんだから当たり前だ。
でも、「生」という名前が付いただけで、特別なものに見えてしまう。
パンより先に、「生」という言葉のイメージだけがふくらんでいたのかもしれない。

