「天然酵母は体に良さそう。」
「イーストは人工的でなんとなく不安。」
そんなイメージを持っている人は意外と多い気がします。
でも、パン屋としては少し不思議な感覚があります。
実は、パン屋でよく使われる生イーストも天然由来の酵母です。
自然界にいる酵母を培養し、パン作りに使いやすいよう品質を安定させたもの。
「人工的に作られた化学物質」というわけではありません。
一方で天然酵母は、果物や穀物などに付いている野生の酵母を育てて使うことが多く、その土地ならではの風味や個性が魅力です。
ただ、「天然=安全」「自然=安心」と言い切れるものでもありません。
以前、天然酵母パンのお店で「酵母収集中」と書かれた紙とともに、フルーツが店先に置かれているのを見かけました。
道路のすぐ横で、車がひっきりなしに通る場所です。
「本当にそこで採った酵母が一番いいのかな?」
そんなことを考えてしまいました。
空気中には酵母だけでなく、ホコリやカビ、排気ガス、さまざまな微生物も漂っています。
自然のものだからこそ、管理には高い技術が必要です。
結局のところ、
天然酵母が良くて、イーストが悪い。
そんな単純な話ではありません。
パン作りに向いているよう育てられた生イーストも、もともとは自然界にいる酵母です。
「天然」という言葉の響きだけで判断せず、その中身を知ると、パンを見る目も少し変わるかもしれません。

